里山の植物図鑑記事一覧
エノコログサ
掲載日:2013年12月09日(月)
道ばたや荒れ地に生えるイネ科の1年草(いちねんそう・芽が出て枯れるまでの期間が1年未満の植物)。茎の高さは20~30センチ。葉は長さ10~20センチで、線のように細い形をしています。8~11月に花が咲き、花の部分は長さ3~6センチの円柱形でまっすぐまたはやや垂れています。よく見られるように花は緑色で、穂の形になっています。穂にはこれもよく見られるように、まわりに毛がたくさん生えています。
写真のエノコログサは花-穂が緑色ですが、ほかにも穂が金色をしているキンエノコロなど、エノコログサの仲間は複数あります。ちなみにエノコログサは漢字で書くと狗尾草。穂が子犬のしっぽに似ていることからいぬころ草と呼ばれ、それがエノコログサに変わったわけです。これはまたの名をネコジャラシといいますが、猫の好きなものとして有名だが、名には犬が入っている、おもしろいと思いますがいかがでしょうか。この花の花言葉は遊び、無関心、愛嬌(あいきょう・かわいらしさと言えばいいでしょうか)です。猫、そして犬を思わせる花言葉と私は思います。
このエノコログサはイネ科の草ですが、里山の植物図鑑では同じイネ科のススキやコバンソウについても述べています。(くわしくは該当する項目をごらんください)私はこれらの草花は似た者同士でみな美しいと思うのです。エノコログサはなみ滝藤原園の畑でよく見ますが、畑の中で作業をしながらエノコログサを見て、きれいだなぁ、と思っています。この畑で2013年11月、自然体験学習会で参加した小学生たちがタマネギを植えました。無事大きくなってほしいと思います。(畑のタマネギについてはこのサイトのホーム、里山通信2013年11月をごらんください)
話は変わりますが、私はなみ滝藤原園でいろいろ仕事をして、その間にこうして園内の草木などの写真を撮っています。撮るたびに季節ごとの草木の姿や風景を見て楽しんでいます。2014年3月27日にメセナSUN-CLUB学びの森は藤原園で里山カルチャー教室として、風景と植物の写真撮影講座を行いました。参加者の方々が写真家の方に植物の写真の撮り方を教えていただき、藤原園内のいろいろな草花の写真を撮りました。この日は春になったということで、園内の咲いた花や生えたての葉を見て楽しみました。この里山カルチャー教室では草木染め(2013年11月21日に行ったが、ヤシャブシの実で布を染めました)や正月の飾りづくりなど自然を学び、楽しむいろいろな行事を行っています。くわしくはこのサイトのホーム「一般:里山カルチャー教室」をごらんください。
サカキ
掲載日:2013年11月29日(金)
山に生えるツバキ科の常緑樹(じょうりょくじゅ・1年以上枯れない葉を持つ木。冬でも枯れない)。高さは約10メートルになり、木の皮はうすい灰色っぽい茶色です。葉は互生(ごせい・たがいちがいに生えること)し、長さ6~10センチの長い卵形で厚く、つやつやしています。6~7月に葉のわきに直径約1.5センチの白い花が下向きに1~4個のひとかたまりになって咲きます。その後直径4~8ミリのまるくて黒い実がなります。
ごそんじの方も多いと思いますが、神社でよく見る木で、枝が神社でのお祈りに使われます。漢字では榊と書きます。ちなみに写真のサカキ、50センチ程度の高さですが、私はこの写真を撮った時、やはり神社を連想し、少し心が洗われたような気がしました、なんてね。このサカキに似た木にヒサカキというのがありますが、葉はぎざぎざのないサカキの葉に対し、少しぎざぎざがあるのが特徴です。しかし、白い花が咲くことは共通していて、この木をサカキの代わりに神社でのお祈りに使うことがあります。そして、このヒサカキも黒紫色の実がなります。サカキもヒサカキもなみ滝藤原園に生えています。
ウラジロ
掲載日:2013年11月29日(金)
東北地方南部より西から沖縄の山や海岸に生えているウラジロ科の常緑性(季節を問わず緑色を保っているのだ)のシダ。まあ簡単に言えばシダの仲間です。高さは80~200センチ。葉の裏には毛が生えていて、これが最大の特徴でしょうが、裏は下の写真のように粉をふいたように白色です。2枚の写真のように表が緑、裏が白。だからウラジロ(裏白)ですね。このウラジロはお正月のかざりによく使われ、見た方も多いのではないでしょうか。
このウラジロはシダの仲間ですが、ワラビやゼンマイ、スギナ(ツクシの大きくなった姿)、この里山の植物図鑑にあるヒカゲノカズラもシダの仲間です。シダの仲間の植物は胞子(ほうし)という種にあたるものを出して仲間を増やし、このウラジロも胞子を出して、仲間を増やしているわけです。
お正月のかざりと書いたのでついでに。2013年12月19日に里山カルチャー教室として、正月の飾りづくりをなみ滝藤原園にて行いました。植物を使って自分の正月の飾りを作っていつもと違うお正月を楽しむ、というものです。(特に秋は木の葉が赤や黄色に変わり、いろんな色が楽しめます。私はいつも眺めていますが、いい景色というほかありません。春や夏、冬の景色もよいので、今後も里山カルチャー教室へのお越しをお待ちしております)この里山カルチャー教室ではこけ玉づくりや草木染め(2013年11月21日に行ったが、ヤシャブシの実で布を染めました)など自然を学び、楽しむいろいろな行事を行います。くわしくはこのサイトのホーム「一般:里山カルチャー教室」をごらんください。
ミゾカクシ
掲載日:2013年11月25日(月)
田んぼのあぜや湿地などに生えるキキョウ科の多年草(たねんそう・芽が出て枯れるまでのいわゆる一生が2年以上の植物。一度枯れても根は生きていてまた芽を出す)。長さは約20センチ。茎が細く、地をはって長くのびる特徴があります。葉は細いだ円形や、針のような形をしていて互生(ごせい・たがいちがいに生えること)します。
6~10月にうすい赤紫色の花が咲きます。写真のように5つに分かれ、横と下に向かって咲くのです。私はこの花をなみ滝藤原園の中の「日本庭園」という庭園の手入れをしているときに見たのですが、下に一見目立たないが、きれいな花が咲いていました。(キッコウハグマみたい。この植物についても同じ里山の植物図鑑で述べています。キッコウハグマの項参照)しかし、ミゾカクシにも毒があるのです。
ちなみにミゾカクシは漢字で書くと溝隠。溝をおおうように繁殖することからこの名がつきました。それにしてもなぜこの植物は下を向いて花が咲くのでしょうか。自分の美しさをひかえめに表現する謙虚さ、といったところでしょうか。そして花は手のひらみたいな形でおもしろいと私は思います。
ヒノキ
掲載日:2013年11月25日(月)
ヒノキ科の常緑樹(じょうりょくじゅ・1年以上枯れない葉を持つ木。冬でも枯れない)。昔から日本でなじみが深く、スギとともに建築材としてよく使われていることで有名です。
高さは普通は20~30メートル。大きいものでは50メートル、直径2.5メートルになります。この木は特徴のある葉をしていて、ごぞんじの方も多いと思います。(魚のうろこみたいな葉ではないでしょうか。ネズミサシ、ヒヨクヒバ、コノデガシワもヒノキ科ということで似たような葉をしています。これらの木についても里山の植物図鑑で述べています。各項目を参照してください)ヒノキの特徴として、さらに木の皮があげられると思います。木の皮は赤茶色で、たてに裂けてはがれていきます。
4月に花が咲き、花にはお花とめ花があります。お花は葉の先にごく小さい茶色っぽい紫色のものが咲き(緑の葉の先に茶色く小さなものがくっついているように見えるが、その茶色がお花である)、め花はまるい形をしています。10~11月には8~12ミリの赤茶色の実ができます。ちなみに種は卵形で羽根があります。(そういえばヒノキの花粉で花粉症に、なんて話を思い出した)
このヒノキを詠んだ和歌が奈良時代の万葉集(まんようしゅう)にあります。
鳴る神の音のみ聞きし巻向(まきむく)の 檜原(ひばら)の山を今日見つるかも
柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)という奈良時代の歌人が詠んだもので、うわさに聞いているだけで、まだ見たことのなかった巻向山の見事なヒノキの林を見て感動した、という意味です。(巻向山は奈良県にある山です)私は小学時代、修学旅行で奈良県に行きましたが、巻向山には行っていないし、まだ行ったことがありません。一度行ってみたいものです。
このヒノキはごぞんじと思いますが、建築や置き物、いろいろな商品などによく使われる耐久性のある、香りのよい木材として知られています。米やうめぼしを見たり食べたりして日本を感じる、ということが多いと思いますが、このヒノキも日本を感じることのできるものではないかと思います。ヒノキは漢字で書くと檜、桧。ちなみに写真のヒノキはなみ滝藤原園のさんや荘という建物の近くの広場に生えています。この広場ほかでメセナSUN-CLUB学びの森では8月、小学生対象のキャンプをするのですが、このヒノキを見るたびに私はキャンプのことを思い出します。(このサイトの記事カテゴリー・自然体験キャンプをごらんください)
ススキ
掲載日:2013年11月07日(木)
山野によく生える、イネ科の多年草(たねんそう・芽が出て枯れるまでのいわゆる一生が2年以上の植物。一度枯れても根は生きていてまた芽を出す)。大きな群れになって生えることが多いです。高さは1~2メートル。放射状(ほうしゃじょう・簡単に言えば四方八方にわかれること)に枝が出て、その先に小さな穂が集まった花が咲きます。花が咲くのは8~10月です。ご存じと思いますが、葉は細くて長く、50~80センチになります。葉のふちはざらついていて、つかむと手を傷つけるおそれがあるので注意が必要です。そしてこの葉は刈って茅葺き(かやぶき)屋根に使われます。
このススキは秋の七草のひとつで、またの名をオバナといいます。そして、このススキ、ハギ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウは秋の七草と呼ばれ、日本を代表する秋の草花とされています。この七つの草花を秋の七草と言って和歌にしたのが、奈良時代の歌人で政治家の山上憶良(やまのうえのおくら)です。下が憶良のうたった和歌です。
萩(ハギ)の花 尾花(おばな)くず花(クズのこと)なでしこの花おみなえし またふじばかまあさがおの花 (ここで言うあさがおはキキョウのこと。昔キキョウのことをあさがおと呼んでいた。今よく知られているあさがおとは違う)
この憶良の歌は万葉集(まんようしゅう)という奈良時代の歌集にのっていますが、他にもススキのことをうたった和歌が万葉集にあります。
さ雄鹿(をしか)の入野(いりの)のすすき初尾花 いつしか妹(いも)が手を枕かむ
作者不明の歌で、鹿が分け入る入野のススキの初穂のようにういういしく若い彼女、いつになったらその手を枕にいっしょに寝ることができるだろうか。その日が来ればいいのに、という意味です。要するに男性の片思いですね。
ちなみにススキは漢字で書くと薄、または芒です。花言葉は素直。見ていると、伸び方も花の咲き方もそんな感じがすると思うのは私だけでしょうか。このススキはなみ滝藤原園内によく生えていますが、私は池のそばに生えているのが一番好きです。池とススキ、この風景が好きなのです。(写真を撮影したのは池のそばではありませんが)
アカメガシワ
掲載日:2013年11月07日(木)
山野に生えるトウダイグサ科の落葉樹(らくようじゅ・毎年葉が枯れて、一定期間休眠する<といっても春にまた花や葉がつくように栄養や力をためているのである>木のこと)。高さは5~10メートル。木の皮は灰色で、たてに浅い割れ目があります。葉は互生(ごせい・たがいちがいに生えること)し、長さ10~20センチの卵形で、先がとがっています。葉が生えたての時は、写真のように赤色をしています。この葉は秋になると、黄色い葉の写真を見ればわかるように黄色になります。(黄色の葉の写真を撮ったのは2013年11月だが、他の写真の緑や赤の葉もよいが、黄色もきれいである)
7月ごろに枝の先に花が咲きます。花にはお花とめ花があり、お花は黄色く、め花は赤色をしています。花のあとにはやわらかいとげに包まれた実がなり、熟すと黒っぽい紫色の種になります。このアカメガシワは生えたての芽が赤いことからこの名まえがつきました。また、カシワの葉(カシワという木の葉である。かしわもちはサルトリイバラ<里山の植物図鑑にこの項目がありますのでごらんください>の葉に包むことが多いが、カシワの葉に包むのが本来のスタイルである)のように昔、食べ物をのせるのに使われました。
ここにある3枚のアカメガシワの写真は夏から秋にかけて撮ったのですが、季節によって違う姿を見せてくる楽しい木です。まあ、そういう木は多いけど、このアカメガシワも緑の時も黄色の時もきれいで、見ていて楽しくなるのは私だけでしょうか。なみ滝藤原園の池のそばや畑に生えています。
コノデガシワ
掲載日:2013年11月05日(火)
ヒノキ科の常緑樹(じょうりょくじゅ・1年以上枯れない葉を持つ木。冬でも枯れない)。もとは中国の木で、日本には江戸時代にやってきました。中国ではこの木は寺や墓地に植えられますが、日本では公園や庭によく植えられます。なみ滝藤原園では出入口のそばなど複数の場所にあります。
藤原園にあるものはさほど大きくありませんが(1~2メートルくらいか)、中国では高さ20メートル、直径2~3メートルになるものもあります。ヒノキみたいな葉を持ち、(ヒノキ科だから当たり前か)花は3~4月に咲きます。この木にもお花とめ花があり、お花は黄色く丸い形で、め花は紫と緑が合わさったような色です。その後写真のように長さ1~2.5センチの実がなり、最初はつやつやした緑色で、10~11月に熟して褐色になります。2013年11月現在、このコノデガシワを見ましたが、実が緑色から褐色に変わりつつあるもの、もう褐色といっていい実を見ました。個人的な感想だが、実を見るとこういう形のチョコレートがあるのを思い浮かべる人がいるのではないかと思います。私は実はこういう形のチョコレート菓子に似ていると思うのですがいかがでしょうか。コノデガシワの実は食べられませんけどね。
コノデガシワは漢字で児の手柏と書きます。よく見れば葉の形は子供の手と思えてくるのではないでしょうか。それが手を合わせるように見えるから、中国では寺や墓地に植えられるのではないかと思います。私もいろいろな意味で、いろいろなものへの感謝や敬意をこめて合掌。なんてね。
ヌルデ
掲載日:2013年11月05日(火)
ウルシ科の落葉樹(らくようじゅ・毎年葉が枯れて、一定期間休眠する<といっても春にまた花や葉がつくように栄養や力をためているのである>木のこと)。山に生え、高さは3~7メートル。葉に特徴があり、複数の小葉(しょうよう・葉を形作っている小さな組織。これが葉っぱに見えるだろうが、葉っぱではなくその一部なのだ)が集まって1枚の葉になっています。鳥の羽根みたいで奇数枚小葉があるので、奇数羽状複葉(きすううじょうふくよう)といわれます。また、葉の軸が太くなっています。(写真を見ればわかると思うが、葉のまん中は細くまっすぐではなく、左右にふくらんでいるみたいです)小葉は長さ5~12センチの長いだ円形で、ふちにぎざぎさがあり、裏には毛が生えています。
8~9月、枝の先に白っぽい黄色で、小さな花が多く咲きます。その後直径4mmの実がなりますが、酸味(すっぱさ)のある白い粉がかかっています。なりたての実はロウ(ろうそくのロウだ)がとれます。そのためこの実は塩の実とも呼ばれています。そして、葉にはヌルデノミミフシアブラムシが寄生してこぶができることがありますが、これをヌルデのふしといいます。これはタンニンが多く含まれ、薬用や染料に使われています。(タンニンは柿でご存じの方が多いと思います。柿のしぶみの成分で、竹や紙、漁業用の網の補強材や防腐剤、染め物に使われ、生活の役に立っているのです)
このヌルデを詠んだ和歌が万葉集という奈良時代の歌集にあります。
足柄(あしがり)の吾(わ)をかけ山のかづの木の 吾をかづさねもかづさかずとも
これは作者不明の、相模国(さがみのくに・今の神奈川県)で詠まれた和歌で、足柄山の、私を心にかけてくれるという名まえを持った山の、そのかづの木(相模国ではヌルデをこう呼んでいたといわれる)のかづという言葉のように、私をかどわかし(かどわかすとは恋愛によく使われる言葉ですが、誘惑<ゆうわく>するという意味です)誘い出してくれないだろうか、たとえ誘い出すのが難しくても、という意味です。ヌルデの方言である「かづ」とかどわかすという意味の「かづす」をかけた言葉遊びの要素が入っていますが、歌をよく読むと相当熱い恋愛のようです…ちなみに足柄山(あしがらやま・和歌の中では足柄をあしがりと読むが、相模国でのなまりである)は神奈川県の金時山(きんときやま)という山にある場所です。
なお、このヌルデ、ウルシ、ハゼノキはご存じの方がいると思いますが、さわると皮ふがかぶれてしまいます。(皮ふが炎症をおこしてしまう)ですから、触らないよう注意する必要があります。ちなみになみ滝藤原園ではヌルデやウルシが多いです。さわらないように注意する必要がありますが、秋になると葉が赤くなり、これを見るのも良いのではないかと思います。(2013年11月のこと)いろいろな木の葉が赤くなったり黄色くなったり、美しいよい光景と私は思います。そこでお粗末ながら一句。
秋の山 雨降らずとも 虹見える
キッコウハグマ
掲載日:2013年10月25日(金)
山地の木陰に生えるキク科の多年草(たねんそう・芽が出て枯れるまでのいわゆる一生が2年以上の植物。一度枯れても根は生きていてまた芽を出す)。茎や葉に毛が生えており、高さは10~30センチになります。長細い茎が印象的と私は思います。9~10月に写真のような白く小さな、キクみたいな花が咲きます。(キク科だから当たり前か)この白い花びらがシロクマの白い毛に例えられ、白熊(はぐま・シロクマという漢字をこう読むのです)と呼ばれています。私はじかにシロクマを見たことはありませんが、確かに白い花は動物の毛を思わせます。
また、葉がカメのこうら(ご存じと思うが、亀甲<きっこう>ともいう)似ていることから、先の白熊(ハグマ)とあわせてキッコウハグマという名まえになりました。ちなみにこのキッコウハグマ、先日なみ滝藤原園の中にある通称サル山の石段に花が咲いているのを見ました。はっきりいってこの花は目立つものではありません。しかし、注意してみるとこのように小さくて、白い花をつけるこの植物があります。小さくてもきらりと光る存在、といったところでしょうか。