ヤブラン
林に生えるユリ科の多年草(たねんそう・一生<芽が出て枯れるまで>は2年以上続く植物のこと。一度枯れても根は生きていてまた芽を出す)。葉は長さ30~60センチ。線のように細く、根元から出て先が垂れ下がっているのが特徴です。8~10月に高さ30~50センチの茎の先にうすい紫色の花が多く咲きます。その後、光沢のある直径6~7ミリの黒い種子ができます。
漢字では薮蘭と書き、やぶに生え、葉がランの花に似ていることからこの名がつきました。この植物に似て、大きさの小さいものにヒメヤブランという植物があります。ランもいいですが、このヤブランもかわいらしい花で好きです。
このヤブランに関する和歌が万葉集(まんようしゅう)という奈良時代の歌集にあります。
ぬばたまの黒髪山のやま菅(すげ)に 小雨降りしきしくしく思ほ(お)ゆ
作者不明の歌で、黒髪山の山菅に小雨が降りしきるように、愛しい人のことがしきりに思われることよ、という意味です。ぬばたまとは黒髪にかかる枕詞(まくらことば。その言葉自体に意味はなくある事柄を引き出すために使われる飾り言葉。現代風に言うならば修飾語か。あしひきの-山、たらちねの-母というように)その黒髪の名がある山に生えているやま菅(ヤブランのこと)に降りかかる雨に自分のせつない恋心を重ね合わせたのでしょうか。これを何か歌謡曲にできそうな気がしますが。ちなみにこの花の花言葉は妥協点(だきょうてん)です。(妥協とは完璧を目指さずにまあこれでいいだろうと思うこと)人生妥協すべきでないこと、ない時はいろいろあるでしょうが、この花を見ると人生時には妥協した方がいいのではないか、と思ったりする私です。