ヤブコウジ
山の木陰によく生えているヤブコウジ科の常緑樹(じょうりょくじゅ・1年以上枯れない葉を持つ木。冬でも枯れない)。高さは10~20センチで、地下茎(ちかけい・地下にのびる茎のこと。根に見えるがそうではなく実は茎なのだ)をのばして増えます。3~4枚の葉が輪のように互生(ごせい・互い違いに生えること)し、形は長さ4~13センチの長いだ円形。ふちに細かいぎざぎざがあります。7~8月に葉のわきに直径5~8ミリの白い花が下向きに咲きます。10月ごろに直径5~7ミリの丸い実が赤く(オレンジっぽい赤)熟します。これもナンテンやセンリョウのように緑の葉に赤い実がなる木ですが、こういう木を見るときれいと思うと同時に幸せな気分になるのは私だけでしょうか。(ナンテンやセンリョウは縁起のよい木として庭木になっています)
そして、これはこけ玉にもよい木です。こけ玉づくりをメセナSUN-CLUB学びの森での行事で行い、小学生や大人の方々が参加して思い思いのこけ玉を作りました。こけ玉とは文字通りコケを周囲ににつけた玉のことで、まず軍手に土を詰め、周囲に水はけをよくするためにこけをつけます。この土に好きな植物を植えて、竹の器に入れて育てて観賞するものです。このこけ玉にヤブコウジも使われました。
ヤブコウジは漢字で書くと藪柑子。この柑子という字はミカン、赤みがかっただいだい色という意味です。ミカンも漢字で書くと蜜柑で、これも柑の字が入っていますね。(ミカンもだいだい色だから)また、ヤブコウジに似た木にツルコウジがあります。
ちなみにヤブコウジに関する和歌が万葉集(まんようしゅう)という奈良時代の歌集にあります。
あしひきの山橘(やまたちばな)の色に出でよ 語らひ(い)継ぎて逢ふ(う)こともあらむ
春日王(かすがのおおきみ)という天皇家の一族が歌った歌で、山橘(ヤブコウジのこと)のように想いを言葉や様子に出してしまえ、そうすれば人が語り伝えてくれて、あの人と逢うこともあるだろう、という意です。恋愛の歌であることは間違いないが、どの時代も好きな人に自分の思いを打ち明けるのは難しいようです…