コバノミツバツツジ
ツツジ科の落葉樹(らくようじゅ・毎年葉が枯れて一定期間休眠する木。休眠といってもこの間また花や葉をつけるため養分や力をためている)山地に生え、よく枝分かれして高さは2~3メートルになります。若い(生えて間もない)枝には褐色の毛があります。葉は枝先に3枚生え、長さは3~5センチと小さいです。葉の両面には褐色の柔らかい毛があります。4~5月に枝先の芽から紅紫色の花が1~3個咲きます。
ツツジといえば、庭木や道路の横に植えられている垣を思い出す方が多いのではないでしょうか。こういうツツジもきれいで心を和ませてくれると思いますが、山の中のツツジは大きく、これまた違った、圧巻とでも言ってよいような魅力を感じさせてくれると思います。ちなみに東広島市の市花(市の花)はツツジです。ちなみにコバノミツバツツジは漢字で「小葉の三葉躑躅」と書きます。
ちなみに、奈良時代の万葉集(まんようしゅう)という歌集にツツジの仲間であるサツキをよんだ次のような和歌があります。
水(みな)伝ふ(う) 磯の浦廻(うらみ)の 石(いわ)つつじ 茂(も)く咲く道を またも見むかも
作者不明の歌で、これは防人(さきもり・奈良時代、国民が政府の命令で唐(とう・昔の中国)や新羅(しらぎ・昔の朝鮮半島にあった国)に対する防衛のために兵隊になって九州を守る制度があり、兵隊になった人を防人といった。現代の言葉で言えば徴兵制<ちょうへいせい>である)の作った歌で、防人歌(さきもりうた)といいます。
水の流れ込む池の磯の辺りに、いっぱいツツジが咲いている。その道を再び見ることがあるだろうか、という意味です。ここでいう石つつじはサツキのことです。ツツジの美しさに感動して、また見たい、戦争から生きて帰ってまた見たいと強く思ったことがうかがえると思います。ちなみに万葉集にはほかにも防人になった国民がよんだ歌が収録されていますが、戦争から帰ってまたふるさとの景色を見たい、愛する人に会いたいという気持ちがこめられています。
メセナSUN-CLUB学びの森では万葉の植物講座として万葉集に登場する植物を見て、万葉集やその歌・植物について知り、楽しむ行事を行っていますが、これにちなみ私もつたないながら歌をひとつ。
青空に ツツジの花が 咲きたるは 山を彩る 春祭りかな