タチツボスミレ

 草地や林などに生える多年草で、日本の代表的なスミレ。

 高さは5~10センチ。2~5月、先に薄い紫色の花をつけ、花の先についている距と呼ばれる部分(花びらやがくの一部が筒みたいになって、後ろに突き出したもの)はやや細長く、紫色です。葉はやわらかめのぎざぎざが入ったハート形で、長い柄があります。この花は漢字では「立坪菫」と書き、茎が立つツボスミレという意味です。タチツボスミレもそうですが、他にもコタチツボスミレなどツボスミレの仲間があります。

 スミレの名の由来は、花の形が大工が使う墨入れ(木に墨で線を引くために使う道具)に似ていることからスミイレと呼ばれ、それが転じてスミレと呼ばれるようになったといわれています。

 このスミレについて、奈良時代の歌集である万葉集に「春の野に すみれ摘みにと 来<こ>しわれぞ 野をなつかしみ 一夜<ひとよ>寝にける」という山部赤人(やまのべのあかひと・奈良時代の歌人・役人)が詠んだ短歌があります。春の野にすみれ摘みに着た私は、この野が去りがたいほど気に入って、一晩ここで寝てしまいました、という意味です。赤人はよほどここが気に入ったのでしょうか。それにしても長時間そこで風景を眺めていたならまだしも、一晩夜を明かしたというのはすごい気がしますが。

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