ササユリ

ユリ科の多年草。(たねんそう・種から芽が出て、花が咲き枯れるまでの一生が2年以上続く植物のこと。多年草は一度枯れても根は生きていてまた芽を出す)。

山地や丘にある草地に生えます。茎にはつやがあり、高さ50~100センチになります。6~8月、茎の先に長さ約10センチのラッパの形の花を横向きにつけます。

花は普通、薄い赤色ですが、白や赤紫色のものもあります。葉が笹の葉に似ていることからこの名前がつきました。個人的な感想ですが、赤い花と緑の葉のコントラストが美しいと思います。しかし、最近全国各地で数が減少し、保存する動きがすすめられています。また、なみ滝藤原園内にもこのササユリ自生地があります。ボードがありますので、そのそばを見ればササユリが見つかるでしょう。そしてこのササユリはなみ滝藤原園のシンボル的存在です。

このササユリを詠んだ山上憶良(やまのうえのおくら・奈良時代の歌人で役人)の歌があります。「(前略)我(あ)が子古日(ふるひ)は (中略) 夕(ゆうえ)になれば いざ寝よと 手を携は(わ)り父母も(中略) さきくさの 中にを寝むと 愛(うつく)しく しが語らへ(え)ば・・・以下略」です。山上憶良の息子の古日が病気になり、看病や神仏への祈りの甲斐もなく死んでしまったことへの悲しみの歌です。

日が暮れると、さあ寝ましょうと言って親の手をとって、古日はお父さんもお母さんも僕のそばを離れないでね。真ん中で寝るよ、とかわいらしくあの子が言うので・・・という意味です。さきくさとはササユリのことで、中(真ん中)を表す言葉、歌で言うところの枕詞です。奈良県の本子守町にある率川(いさかわ)神社で、毎年6月17日に「三枝祭(さいぐさまつり)」が行われます。これはゆりまつりとも呼ばれ、奈良の三輪山(みわやま)で摘んだササユリが神様にささげられ、参拝客にもササユリが厄除けとしておくられます。ササユリは強い香りがして、この香りが悪いことを追い払い、幸せを呼ぶとされています。このことからササユリ(さきくさ)がなぜ中の枕詞になっているかというと、ササユリに厄除けの効果があるということが転じて、何かに囲まれて、その中で守られているという意味があるからと思いますが、皆様はどう思われますか。

また、大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)という奈良時代の歌人の作った歌に、

夏の野の 繁みに咲ける 姫百合(ひめゆり)の 知らえぬ恋は 苦しきものそ (夏、しげみに咲いているヒメユリのように、相手にわかってもらえない片思いの恋は苦しいものだよ)があります。(切ない、切実な恋心・・・)

そして、並滝では万葉の植物講座が行われていますが、これにちなんで私もつたないながらササユリの歌をひとつ。

ササユリの上花開き下は竹 不思議な姿に魅せられる午後

あと、メセナSUN-CLUB学びの森で行っている万葉の植物講座に参加したい方を募集しています。植物、または万葉集など歌に興味のある方お待ちしています。くわしくはこのサイトの万葉の植物講座、または里山カルチャー教室の項目をごらんください。

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