ノイバラ

バラ科の落葉樹((らくようじゅ・毎年葉が枯れて、一定期間休眠する<といっても春にまた花や葉がつくように栄養や力をためているのである>木のこと)。山野に生え、高さ2メートルぐらいになります。。枝に鋭いとげが多い。葉は3~4枚の卵型や長いだ円形の小さな葉が集まって1枚の葉になっています。(こういう葉の形を複葉<ふくよう>という。一見葉が何枚もあるようだが、実は小葉<しょうよう>という葉の一部である小さな葉に見えるものが何枚か集まって1枚の葉を作っている。これに対し、小葉の集まりがなく、1枚で葉になっている形のものを単葉<たんよう>という)

5~6月、枝先に香りのある白や薄紅色の花が多数咲きます。花の直径は約2センチで、花弁(花びら)は5枚。果実は直径6~9ミリの球形で赤く熟し、乾燥させて薬用にします。便秘にきくが、効き目が強いので飲みすぎに気をつけなければならないといわれています。また、出たばかりの芽も食べることができます。庭木や接木の台木にも使われたり、香りがよいので香水の原料に使われたりします。

この植物は漢字では野薔薇と書きます。畑や森に生えるとやっかいで、鋭いとげでいばらだけになかなか先に進めません。そのノイバラを詠んだ歌が万葉集(まんようしゅう)という奈良時代の歌集にのっています。丈部鳥(はせつかべのとり)という人が詠んだ、道の辺(へ)の 茨(うまら)の末(うれ)に 這は(わ)豆の からまる君を 別れか行(ゆ)かむ(道端のうまら(イバラのこと)の枝先につく豆が、からみつくように抱き合っているあなたを残していくのか)、という歌です。これは防人(さきもり・奈良時代、国民が政府の命令で唐(とう・昔の中国)や新羅(しらぎ・昔の朝鮮半島にあった国)に対する防衛のために兵隊になって九州を守る制度があり、兵隊になった人を防人といった。現代の言葉で言えば徴兵制<ちょうへいせい>である)になって故郷から九州へ行く作者の不安と、作者に行かないでほしいと思う家族の思いを表現したもので、情景がはっきり浮かんでくるようですが、いかがでしょうか。

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